90年代後半の工場で

「現場が回ってないなら何故言わない」。

現場担当の係長に怒鳴られたのは、90年代後半。20代の終わり頃。

バブル崩壊後の不況の真っ只中、何故かラインがフル稼働し始めて、それまでより1時間早く出勤することになった。

そんな中。年度末にリストラがあり、1人当たりの作業量が増えた。退職した人間の穴埋めはされなかった。

5月だか6月だったか、1人目が腰をやられていきなり脱落。そこから脱落の将棋倒し。4人目か5人目が辞めた後だったか、ラインを止めて全員集合、という日があった。クレームでも出したかと思いながら集まると、冒頭のお言葉。

「これだけ人数が減って現場が回ると思ってる方が頭おかしいんだよ」としか思わなかった。

出勤するのが毎日嫌でしょうがなかった。不眠になった。抗うつ剤の世話になった。「休んだら同僚に迷惑がかかる」、出勤する理由はそれだけ。今はぽんこつのおばさんだが、当時は部署に数名だけのオペレーターの1人だった。

ブラック企業という言葉はまだなかった。

非正規労働者だったことしかない私には、係長がラインを止めて、非正規労働者達を集めて怒鳴った理由が、今もわからない。「現場が回ってないなら何故言わない」?

結局6人目だか7人目だかの退職者になった。

20数年後の現在、2022年秋。のうのうと生きのびて、性懲りなく、貯金を取り崩して暮らす失業者をしている。

夏に前職を辞したことは、残念には思っているけれど、後悔はしてない。

何処も悪くなく痛くなく、動けて歩けるって素晴らしい。