2023年9月17日 百鬼夜行シリーズの最新刊

買い物に行った際、本屋の店頭で京極夏彦の新刊を発見して「ええーッ」となる。

収入が不安定になってから、ドライアイがひどくなってから、本は滅多に買わなくなり、新刊のチェックもしなくなったので、晴天の霹靂である。

値段を見て目を剥く。昭和生まれの人間にとって、税別¥2200は講談社ノベルズの値段じゃない。

来月末で失業する人間が買う本でもないが、レジへ持っていく。¥2440あれば何日生きのびられる食費になるかより、餓死が末路だとしても読んでから死ぬ方を選ぶ。

帯に「30th」の字を見て「ああ」と思う。

30年前。私はブックオフでバイトをしていた。私が買った「姑獲鳥の夏」は店の商品だった本で、結構読み込まれていて、表紙も角も少々傷んでいたのだった。

ブックオフの仕事は、好きではあったけれど、約5年働いて昇給は試用期間後の1回だけという待遇に愛想が尽きた。FC店舗のみじめさを学んだ。

帯には「予告から17年」ともある。

17年前。私はまだ30代だった。工場勤めが厭になり、リゾートバイトの派遣でふらふらしていた頃。

インバウンドは、まだ言葉すらなかった。何処も不景気で、廃墟のない温泉地は無いという現実は既にあった。就業先の旅館から「予約が入ってない、お客さんが少ないので休んで下さい」と言われるのもよくあることだった。

食っていけない仕事だと見切りをつけて家に帰り、工場派遣を再開したが、不景気で雇い止めの連発、挙げ句に2008年のリーマンショックで、とどめ的に痛い目に遭うことになる。

場当たり的に日銭を稼いできた職歴はともかく。しぶとく生きのびて新刊を買えたのだから、よしとしよう。

購入した「鵼の碑」なのだが。

活字を読むのは速い方だが、ドライアイのことを考慮すると「今日はここまで」方式で読み進めないと、えらいことになる。

嗚呼。読み終えられるのはいつだろう。